156.煮詰め過ぎた黒砂糖つくり 2018年1月2日
(1)はじめに
昨年の12月から今季の黒砂糖作りをはじめたが、2回目で失敗してしまった。
サトウキビシロップの煮詰めすぎで、最終シロップがブロック状に固化せず飴状になってしまったのだ。
どこで煮詰めを止めるかは非常に重要で、120~125℃で止めて撹拌冷却にはいるべきという条件を設定してきた。
(第7節 黒糖製造条件)
しかし、慣れてくると温度を測定せずに、シロップの状態を見て止めるようになってしまっていた。
そこで今回、煮詰めすぎたというわけだ。まだまだ職人芸にはほど遠い。
ここに、正常にブロック状に固化した黒砂糖と飴状になった黒砂糖を比較した。
(2)サトウキビの刈り取りから清澄ジュースの取得まで
写真1,写真2,写真3にその経過を示す。
この工程は問題は無い。
(3)清澄ジュースの1次濃縮
この工程も問題はない。
写真4に濃縮経過、サンプルを20mlガラス瓶に入れて撮影したときのRGB,および60℃乾燥固形分を示した。
写真5は60℃で24hr乾燥したときの乾燥前後のサンプルの状態である。
①ジュースと②加熱ジュースには沈殿物が認められた。
③サイホンジュース④濾過ジュー⑤濃縮前⑥濃縮0.25hr⑦濃縮0.75hrは乾燥前も後も透明である。
⑧濃縮0.75hr⑨濃縮1hrではスクロースの結晶が乾燥後に認められた。
⑩濃縮1.13hr(濃縮終了時)は乾燥後、飴状に固化した。
固形分は図1のように上昇し、最終的に90wt%となった。
RGBは図2のように低下した。
R%,G%は増加し、G%は減少した。
(5)シロップの煮詰めと冷却
1次濃縮シロップは3回に分けて煮詰め→冷却→固化作業を行った。
Batch Aは ブロック状になったが一部飴状部分があった。
Batch Bは 完全に飴状で放置するとガラス状になった。ナイフでははぎ取りできず、ハンマーでたたき割った。
乾燥すると溶融して、飴状になった。
Batch Cは半飴状で、ハンマーで叩かないとパットからのはぎ取りは困難であった。
BatchB.Cは苦味が強く、黒砂糖としては失敗品であった。
(6)黒砂糖の固形分測定
黒砂糖の固形分は60℃で22hr乾燥して測定した。
Batch Bのサンプルは60℃乾燥で飴状となった。
Aは乾燥により固形分94.7%→98.2%に3.5%上昇した。
Bは乾燥により固形分98.2%→97.2%に1.0%下降した。
Cは乾燥により固形分98.3%→97.9%に0.4%下降した。
すなわち、飴状化したサンプルは食器乾燥機により乾燥できず、むしろ吸湿したと言える。
(7)正常黒砂糖と失敗黒砂糖の比較
今季1回目の黒砂糖つくりは成功し,#1-Normalとして比較対照とした。(表1)
成功した黒砂糖の固形分は乾燥前に94wt%を越えていない。(図4)
一方失敗した黒砂糖の固形分は98wt%を越えている。
明らかに煮詰めすぎである。
固形分として0.1wt%の水溶液のOD280nmを図5に比較した。
黒砂糖水溶液は図6に示すように280nmにピークを有している。
煮詰めすぎて飴状化した黒砂糖は明らかにOD280が高い。
黒砂糖の固形分とOD280nmを図7にプロットした。
飴状にならないブロック状の黒砂糖は乾燥前の固形分が95wt%を越えてはならないと言える。
サトウキビシロップの固形分と大気圧における沸点の関係を図8に示す。
乾燥前の黒砂糖固形分が95wt%を越えないようにするためには125℃を越えないようにすることが必要である。
一方120℃より低くなると今度は濃度が薄すぎて固化しなくなるであろう。
(8)おわりに
次回からはもう一度初心に立ち返って、温度をきちっと測定し、正常な黒砂糖をつくるようにする。
研究日誌の最初のページに戻る