157. サトウキビジュースの200℃蒸発乾固  2018年1月21日

(1)はじめに

  前節で黒砂糖製造時にシロップを濃縮しすぎると飴状になってしまうことを述べた。
このときの飴状黒砂糖の紫外可視吸収スペクトルを見ると280nmの吸収が著しく増加していた。
そこで、今回はサトウキビジュースを200℃のホットプレート上で蒸発乾固させたときの加熱残渣の紫外可視吸収スペクトルを測定した。


(2)方法

 サトウキビジュースの調製方法を写真1に示した。
 煮沸終了後のジュースの大部分は別の実験に使用したが、その一部を冷蔵保存しておいたものを本実験に使用した。(写真2)
 ジュースの約5gをステンレス皿に入れて正確な重量を測定したのち、写真3のように一定時間ホットプレートで加熱した。
 加熱残分を水に溶解して50mlとし、遠心上清を50倍希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。
 
  


(3)加熱経過(写真4)

 写真4のような経過を示し、7分間で蒸発乾固した。

 


(4)加熱残分の水溶解

 室温にまで冷却したときの加熱残分の画像を写真5に示した。
 これを水で溶解し、50mlにしたときの画像を写真6に示した。
 
  

 水溶解液を6000rpmで5分間遠心分離したときの画像を写真7に示す。
 3分から微少な不溶解焦げが発生しはじめ、7分で多量の沈降と浮遊が認められた。

  


 (5)遠心分離上清の紫外可視吸収スペクトル

 図1に遠心分離上清を水で50倍希釈したサンプルの紫外可視吸収スペクトルを示した。
 また図2には加熱前(0min)の吸光度を差し引いた吸光度増分スペクトルを示した。
 増分スペクトルでは200nm,220nm,280nmにピークを有する成分が加熱とともに増加した。

 
 


(6)加熱残分とODの経過

 表1に加熱残分、OD増分および5分のOD増分を100%としたときの相対OD増分の変化を示した。

  加熱残分は21~22wt%まで急速に低下する。
  21~22wt%というのは60℃乾燥固形分に相当するので、ここまでは水分の蒸発によるものである。
  それ以後の加熱残分の低下はゆっくりと進む。スクロース、その他の有機物の脱水重合で水を失っていく過程に相当する。
  この間、サンプルは溶融し泡だっている。
  7分では溶融、泡立ちは停止し、蒸発乾固した。


  
 
 すべての相対OD増分変化は図4に示す如く、同じパターンで上昇した。
 水分の蒸発が続いている間(2分まで)はΔODの上昇はないが、それ以後、急激に上昇する。
 5分から7分にピークがあり、7分ではΔODは減少した。
 スクロース等の脱水重合で生成した色素がさらに重合して不溶性のコゲになるためと考えられる。
 図5には加熱残分と相対OD増分の関係を示した。
 加熱残分が24%以上(>60℃乾燥固形分濃度)ではΔODの上昇はほとんどないが、23%を切ると急激に上昇する。

  


(7)まとめ

 ジュースの自由水が蒸発している間はOD420,280,220,200とも上昇はほとんど起こらない。
 OD上昇がおこるのはスクロース等の有機物に結合している水分子が蒸発を開始以降である。
 黒砂糖をつくるときの加熱の終点は若干の自由水を残したところであると考えられる。
 今後、加熱による紫外可視吸収スペクトルの変化のパターンが純粋なスクロースでも同じように起こるのかどうかを見てみたい。


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