159.煮詰め不足の黒砂糖つくり 2018年1月25日
(1)はじめに
156節ではサトウキビシロップを煮詰め過ぎて飴状になってしまった黒砂糖つくりについて記載した。
本節では煮詰め不足で飴状になってしまった黒砂糖つくりについて述べる。
(2)サトウキビの刈り取りから濃縮シロップ調製までの経過
写真1,2.3に示した経過は通常どおりである。
1次重液の濾過はペーパータオルを濾紙代わりにして濾過していたが、今回は写真4に示すように濾布を使用してみた。
多くのロートや容器を使用しなくて済むが、全体としての濾過時間はほとんど変わらなかった。
濾液はペーパータオルを使用したときに比較して濁度が高かった。
また濁度の高い濾液をペーパータオルを使用して再濾過をしても濁度は低下しなかった。
従って、より清澄な濾液を得たい場合は濾布を使用する方法は使用しがたい。
1次重液の濾過方法については昨年と同じく良い方法は見つかっていない。(第118節参照)
混合清澄ジュースの濃縮経過を写真5に示した。
60℃乾燥固形分の変化を図1に、サンプルを20mlのガラス瓶に入れた写真から計測したRGBの変化を図2に示した。
(3)シロップの煮詰め
シロップをA,B,Cの3つに分け図3のような温度経過で加熱冷却を行った。
Aは125℃に到達後、すぐに冷却を開始した。
Bは125℃に到達後、125℃付近でしばらく維持し(火力を調整しなくても自然に維持される)、130℃到達時点で冷却を開始した。
CはBと同様にしばらく125℃付近で維持し、135℃到達時点で冷却を開始した。
その結果、写真6に示すようにブロック状に成型できたのはCだけでA,Bは飴状となった。
煮詰め終了直後のサンプルをとり60℃で乾燥したときの状態を写真7に示した。
Cパサパサであったが、A,Bは飴状であった。
156節で煮詰め過ぎて飴状にしないためには煮詰め温度が125℃を越えてはならないと記載したが、これは必要十分条件ではないと言える。
今回135℃まで上がったCだけがブロック状になったのである。
しかし、従来125℃で成功していたのも事実であるので、そのときのシロップの性状、使用した鍋の違い、使用した温度計によっても変わってくるものと考えられる。
(4)煮詰め不足で飴状になった黒砂糖の再生
煮詰め不足で飴状になった黒砂糖は溶融して再度煮詰めればブロック状の黒砂糖に再生することができる。
写真8のホットプレートで60℃まで加熱したときの状態を示す。
Aは流動性が良好で、完全に煮詰めようの鍋に移すことができた。
Bは流動性が悪く、一部パット内に残存した。
濃厚シロップの再煮詰めの状況を写真9に示した。
また温度変化を図4に示した。
Aは135℃まで上げてから冷却したが、Bは120℃で粘性が高くなり、これ以上加熱すると焦げが発生するおそれがあるため120℃で
冷却にはいった。
このことからも温度だけでは煮詰め終点を決定することはできず、シロップの状態を目で見て判断する必要がある。
再生した黒砂糖は写真10に示すように、正常なブロック状となった。
黒砂糖の重量変化を図5に示した。
黒砂糖の乾燥固形分の変化を図6に示す。
これによれば煮詰め不足で飴状にならないようにするためには固形分は94%以上である必要がある。
一方156節で述べたように煮詰め過ぎて飴状にしないためには固形分は95%以上にしない必要がある。
固形分を94%~95%にコントロールすることは職人技と言えよう。
(5)まとめ
きれいなブロック状の黒砂糖をつくるためには、温度120℃から125℃の範囲で、液性を良く観察しながら煮詰めの終点を決める必要がある。
煮詰め不足で飴状化した黒砂糖は再度煮詰めれば容易に再生することができるが、煮詰め過ぎた黒砂糖は再生できない。
従って、煮詰め過ぎだけは十分に注意しなければならない。
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