160. サトウキビジュース濃縮中の紫外可視吸収スペクトル 2018年2月1日
(1)はじめに
サトウキビジュースを煮詰めて黒砂糖をつくるとき、糖蜜色の急激な増加は最終煮詰め工程でおこる。
それでは、最終煮詰めの前段階である濃縮工程での色度はどの程度増加するだろうか。
ここでは、濃縮液を経時的にサンプリングし、エタノール濃度を変えた水溶液で抽出し、その紫外可視吸収スペクトルを測定した。
(2)実験方法
実験方法を図1に示した。
またサトウキビの刈り取りから清澄ジュースができるまでの過程を写真1と写真2に示した。
(3)混合ジュースの濃縮経過
写真3に濃縮経過を示した。
60℃で乾燥した固形分濃度は図2のように増加、RGBは図3のように減少した。
(4)紫外可視吸収スペクトル
エタノール濃度を変えた各種溶媒での抽出液の紫外可視吸収スペクトルを図4に示した。
200nm、270nm、330nm付近にピークまたはショルダーが認められた。
(5)ODの変化
可視部の着色度を示すためにOD420を用い、ピークまたはショルダーの波長に対応するOD330,OD270,OD200の経過を図5に示した。
①OD420:エタノール濃度100%では1.25hrのみ減少したが、それ以外は増加した。
②OD330:①と同様であった。
③OD270:①と同様であった。
④OD200:エタノール0%→減少
エタノール30%→増加
エタノール60%→一度増加して減少
エタノール100%→一度増加して減少
固形分あたりのODの経過を図6に示した。
①OD420、OD330、OD270はいずれの波長でも以下のような経過を示した。
*エタノール0%:0.5hrで減少、その後一定
*エタノール30%:0.5hrで増加、その後減少
*エタノール60%:一定
*エタノール100%:一旦増加して減少
②OD200ではいずれの溶媒でも減少した。
これより固形分あたりで見ればOD420を指標とする糖蜜色色素の増加はないと言える。
OD200の減少は200nm付近に吸収のある物質が揮発したものと考えるのが妥当である。
(6)溶媒のエタノール濃度の影響
図7に抽出溶媒のエタノール濃度と固形分あたりのODの関係を示した。
①OD420
エタノール濃度の増加とともに減少する。
可視部に吸収のあるメラノイジン色素は分子量が大きいので、エタノール濃度が高いほど抽出されにくくなることを示唆している。
②OD330
1.25hr以外はエタノール濃度にかかわらずほぼ一定である。
1.25hrは固形分濃度が高く、エタノール濃度が高くなるとスクロースが大量に析出するので、これに付着して抽出されにくくなるためと考えられる。
③OD270
②と同様である。
④OD200
エタノール濃度にかかわらずほぼ一定である。
⑤OD420,OD330,OD270はエタノール濃度30%、濃縮0.5hrで高くなっている。
この期間にエタノール30%に溶解しやすい物質が生成されている可能性がある。しかし、その後の加熱で減少する。
(7)まとめ
最終煮詰め前の濃縮では糖蜜色色度の増加は起こらなかった。
濃縮液の色度が高くなる(OD420の増加、RGBの減少)のは単に濃度が上昇しているためである。
100℃を越える温度で濃縮して、色度が増加しないのは意外であった。
精製のために消石灰を使用していないのが原因かもしれないので、今後、消石灰処理をした場合との比較をしてみたい。
OD200の減少は濃縮中による揮発と考えられ、次節で検討する。
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