170.糖蜜発酵廃液水槽脱色試験液の透析分画 2018年3月23日

(1)はじめに
 154節で調製した1次軽液濃縮液について168節ではエタノール抽出分画を実施した。
 本節では透析膜(MWCO 3,500)による分画を行った。


(2)実験経過

 透析の経過を写真1に示す。

 透析外液は写真2のように煮沸濃縮した。
 糖液内液には沈殿が存在したので、遠心分離により上澄と沈殿(写真4)に分けた。
 分画液の画像を写真3に示す。
 写真5には60℃で一定重量になるまで乾燥したときの、乾燥物の状態を示す。


(3)実験条件とマスバランス

 図1に実験条件とマスバランスを示す。

 


(4)内液の沈殿について

 内液を遠心分離するにあたり、ビーカーから遠心管に移す前には十分撹拌してから15mlずつを C1→C2→C3→C4→C5→C6→C7→C8の順に行った。
 図2はサンプリング順序と乾燥時間(0hr,24hr,48hr)ごとの沈殿重量の関係を示したものである。
 C1からC5までの沈殿重量はほぼ同じであるが、C7、C8は増加している。
 これはこの沈殿物が極めて沈降しやすく、移しかえ中にビーカー底部に沈降したためである。
 図3には遠心管のまま乾燥したときの重量変化を示す。
 遠心管のままの乾燥では未乾燥であったため、ステンレス製小皿に移しかえて乾燥を続行した。
 全体の乾燥曲線を図4に示す。
 沈殿物は透析により発生したものではなく、1次軽液濃縮液を長期間冷蔵庫に保存していたときにゆっくりと凝集沈降してものと考えられる。

 

 


(5)固形分バランス

 60℃乾燥固形分のバランスを図5に示した。、
 沈殿18%、内液上澄(分子量3,500以上)29%、外液(分子量3,500未満)53%であった。
 固形分の半分強は分子量3,500未満の物質である。

 


(6)紫外可視吸収スペクトル

 固形分5mg/dlに換算した紫外可視吸収スペクトルを図6,図7に示した。
 
 固形分あたりの吸光度の大きさは 内液遠心上澄>>内液沈殿溶解液>外液濃縮液であった。
 測定時の希釈条件は以下のとおりである。
 内液遠心上澄:水で1000倍に希釈
 内液沈殿溶解液:沈殿を1%Na2CO3に溶解後(固形分75mg/dl)、水で100倍希釈
 外液濃縮液:水で100倍に希釈



 波長と吸光度の関係は300nmより長波長で直線になる。
 そこで300nmの吸光度を100%とした相対吸光度のスペクトルを図8に示した。
 勾配の大きさは外液濃縮液>>内液遠心上澄>内液沈殿溶解液の順である。
 勾配が小さいほど、重合度、共役二重結合数が多くなり腐植化が進んでいると言える。




(7)色度バランス

 固形分あたりの色度OD420nmは圧倒的に内液遠心上澄が高く(図9)、 色度の93.5%が内液遠心上澄に分布していた。(図10)




(8)終わりに

 色度の90%以上が内液遠心上澄に分布していた。一方 乾燥固形分の分布は約30%であった。
 外液濃縮液と内液遠心上澄について、MSG-グルコース系メイラード反応への作用を見る実験を実施予定である。


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