172.糖蜜発酵廃液水槽脱色試験液への塩化鉄(Ⅲ)添加 2018年4月9日
(1)はじめに
第154節で調製した軽液濃縮液を再度水で希釈し、これに塩化鉄(Ⅲ)を添加し、糖蜜色色素の凝集性を見た。
(2)方法
実験方法を図1に示す。
(3)塩化鉄(Ⅲ)添加液を静置したときの色素凝集状況
写真1に示す如く、静置開始後15分で添加濃度400ppmと500ppmで凝集が起こった。
3hr静置するとさらに600ppmと700ppmでも凝集が起こった。
サンプルのかわりに水を使用した実験では添加濃度が高くなるほど塩化鉄(Ⅲ)による黄色が濃くなった。
(4)遠心分離の状況
遠心分離後の状況を写真2に示す。
添加濃度200ppm以上で沈殿量が増加し、400ppm~700ppmの範囲で遠心上澄の色度が減少した。
(5)遠心上澄の紫外可視吸収スペクトル
図2-1はサンプルにFe(Ⅲ)を添加した場合、図2-2はサンプルの代わりに水を使用した場合の紫外可視吸収スペクトルである。
図3には塩化鉄(Ⅲ)無添加のときのODを100%ろしたときの塩化鉄(Ⅲ)濃度と種々のODの関係を示す。
すべてのODが添加濃度400~700ppmで最小となる。
添加濃度800ppm以上では相対ODが100%を越える。これが塩化鉄(Ⅲ)自体の色度のためである。
(6)サンプル上澄ODから水上澄ODを差し引いたODのスペクトル
吸光度差スペクトルを図4に、Fe(Ⅲ)無添加のときの吸光度差を100%としたときの相対吸光度差スケクトルを図5に示した。
さらに塩化鉄(Ⅲ)濃度と相対吸光度差の関係を示したのが図6である。
相対吸光度差が最も小さいのは△OD360nmであり、添加濃度700ppmで極小となった。
ΔOD200nmを除くすべてのODで添加濃度320ppm~780ppmの間で、相対吸光度差は負の値となった。
糖蜜色色素と塩化鉄(Ⅲ)双方が凝集して除去されていることを示している。
(7)まとめ
塩化鉄(Ⅲ)で糖蜜発酵廃液中の糖蜜色色素を凝集除去することは、廃水処理法の常法である。
糖蜜色色素は高分子アニオンなので、Fe3+により中和されて凝集する。
凝集物の電荷が中和される最適な塩化鉄(Ⅲ)の濃度があり、過剰に添加しても色素は除去されない。
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