202.(続)自家製最終糖蜜
第120節で5次糖蜜を自家製最終糖蜜として記載したが、この5次糖蜜を21ヶ月冷蔵庫に保管したら、新たな砂糖の結晶が析出してきた。
これをデカンテーションで分離して6次糖蜜と5次砂糖結晶を得た。(写真)
図1に分離次数と糖蜜発生率の関係を示す。糖蜜発生率は分離前の液重量に対する分離後の糖蜜の重量比である。
2017年2月の時点では5次糖蜜を放置してももはや砂糖の析出はない。すなわち6次糖蜜の糖蜜発生率は100%になると予想した。
しかし、その予想ははずれたのである。
写真2のように6次糖蜜と5次砂糖結晶を20w/vに水で溶解し、そのBrixを測定した。
自家製5次糖蜜のBrixは実際のタイ糖蜜に比較し低かったが、6次糖蜜はタイ糖蜜と同レベルであった。
図3. に紫外可視吸収スペクトルを比較した。
6次糖蜜は5次糖蜜に対して吸光度は大きく増加した。
図4は2017年タイ糖蜜から自家製6次糖蜜を差し引いた吸光度差のスペクトルである。
①260nmより長波長ではタイ糖蜜>自家製6次糖蜜である。
これは製造過程での熱履歴の差によるメイラード反応生成物の大小によるものと考えられる。
②220nm付近では自家製6次糖蜜>>タイ糖蜜である。
自家製糖蜜は石灰処理をしていないので、石灰とともに沈殿する有機酸が残っている可能性がある。
③200nmより短波長ではタイ糖蜜>>自家製6次糖蜜である。
塩素イオンや硫酸イオンなどの差によるのではないかと考えられる。
図5は6次糖蜜から5次砂糖結晶を差し引いた吸光度差スペクトルである。
①400nm以上の可視領域では両者に大きな差はない。
②紫外部では6次糖蜜>5次砂糖結晶であり、その差は210nm付近で最大となる。
おそらく低分子の有機酸類が析出せず、糖蜜に移行したためではないかと考えられる。
写真3は分離直後と一夜室温に放置して風乾した5次砂糖結晶である。
6次糖蜜からはもはや砂糖の結晶は析出しないと思うが、念のため冷蔵庫に再保存して確認することにした。
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