206. 微生物コロニーの糖蜜発酵廃液脱色 2
第204節に記載したとおりコロニーNo.7-1 と No.7-3の糖蜜発酵廃液脱色能力が大きかった。
本節では、204節で得た最終放置液を種菌として糖蜜発酵廃液に混合し通気培養を行いその脱色能力を評価した。
(1)実験方法
実験条件を表1に示した。
栄養源の有無が脱色性に影響を与えるかどうかを見るために、エビオス錠を添加した実験を入れた。
温度は恒温槽で30℃にコントロールし、通気は水槽用エアレーターで行った。
毎日、発酵液のpH,重量を測定し、10mlをサンプリングして遠心分離(6000rpm*10min)を行い、その上清を水で100倍に希釈し紫外可視吸収スペクトルを測定した。
実験経過を写真1に示す。
肉眼では脱色されているかの判定はできなかった。
(2)温度、pH、重量ロスの変化
温度変化を図1にpH変化を図2に示す。
pHは培養日数とともに上昇するが初期の上昇速度には下記のように大きな差が認められた。
2B >2A >1A >1B
pH上昇の主原因は有機酸の消費によるものと考えられる。
図3に累積重量ロスの経過を示した。
重量ロスは水の蒸発と炭酸ガスの放出によるものであると考えられる。
この値には条件によって大きな差があり、図4に示すように培養1日目のpH上昇と累積重量ロスには良好な直線関係が認められた。
すなわち、糖から生成された有機酸、最初から存在した有機酸が消費されて重量が減少し、同時にpHが上昇したとするとうまく説明ができる。
(3)遠心上清の紫外可視吸収スペクトル
培養開始時の吸光度を100%としたときの相対吸光度のスペクトルを図5に示す。
この中で波長210nm、300nm、450nmの相対吸光度(OD)を代表させ、図6のその経過を示す。
ODの経過には条件によって大きな差があるが最終的にはいずれも50~60%まで減少した。
初期のOD減少速度は 2B > 2A > 1B > 1Aであった。
すなわちコロニー7-3の方が7-1より脱色速度が大きく、 エビオスを添加した方がしない場合より脱色速度が大きかった。
(4)遠心上清の吸光度差スペクトル
培養開始時、培養5日目および両者の差のスペクトルを図7に示す。
図8には吸光度スペクトルを条件によって比較して示した。
280nm付近の吸光度差を比較すると 2B > 2A > 1B > 1Aであった。
また図9に示すように累積重量ロスとOD280nmの減少には正の相関が認められた。
(5)遠心残渣の顕微鏡写真(写真2)
遠心残渣には種々の微生物が含まれていた。
本節ではそれぞれの微生物についてのコメントはしない。
(6)今後の進め方
培養5日の培養液にグルコースを添加し、培養を続行することにした。
多くのメラノイジン脱色微生物はグルコースを要求する例が多いからである。(第108節)
本節での結果では50%の色素物質が残存したが、グルコースの添加によりさらに減少するのかしないのか楽しみである。
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