226.タマネギの皮  2019年4月8日


 タマネギも表皮を剝けば新しく軟らかい表皮が現れる。そのタマネギを放置したら新しい表皮が硬くなって強い表皮となる。
そのつど表皮を剝いていったらタマネギは最終的にどうなるのかという疑問が生じた。
そこでタマネギ農家からいただいたタマネギ(第183節)を室温に放置して観察してみた。

 写真1に示すように、2枚目までは薄い糖蜜色をしているが、2枚目を剝くと白い表面が現れた。
時間がたつよ白い表面は緑色となるとともに上部から薄い糖蜜色となり、最終的には全体が薄い糖蜜色となった。


 写真2に示すように、薄い糖蜜色となった3枚目の皮をむくと、新しい表面はすでに緑色であった。
経過とともに緑色が薄まり、薄い糖蜜色に変化していった。
同時に球が二つに分かれ始めた。4枚目の皮を剝くと完全に二つの球に分離していた。
一方の急は薄い緑色、もう一方の球は薄い糖蜜色であった。


 写真3に示すように、それぞれの球から緑色の芽が出てきた。
5枚目の皮は完全に糖蜜色にはなっていなかったが、すっぽりと向けてしまった。
5枚目の皮をむいた球の芽はどんどん伸びてネギ状の葉が生長していった。

 写真4に示すように6枚目の皮は極めて薄い糖蜜色であった。
 葉はさらに伸びていった。
 写真5に示すように7枚目の皮も6枚目と同様であった。
 6枚目の皮をむいてからは葉の生長がとまり萎れ始めた。

 

 
 写真6ではもはや葉の生長はなく、特に左側の葉は枯れてしまった。
 ここで放置を停止し、最期の8枚目の皮剥きを行った。
 球はらっきょう程度の大きさにまで小さくなった物が残っていた。



 表1に放置日数とタマネギの状態変化および皮剥き日を示した。
皮剥きの間隔はタマネギの状態により大きくことなっていた。


 図1に皮剥き間隔日数を示した。
 2枚目~3枚目、3枚目~4枚目は間隔日数は極めて長く98日に達した。
 この期間は球が1個から2個に分割されつつつある時期である。
 2つに分割されてからは、間隔日数が短縮した。
 1枚1枚剝くと言うよりは、何枚もの皮がもとまって脱落するという感じである。

 
 

 剥き取った皮の処理方法を図2に示した。


 剥き取った皮は乾燥粉砕して60vo%のエタノール水溶液で抽出した。その経過を表2に示す。

 図3に乾燥時の重量変化を示す。



図4に乾燥固形分を比較した。
3枚目までは固形分が高く、室温で保存しても変化はなかったが4枚目以後は固形分が低く一部カビが発生した。
それにしても、これだけの固形分しかなかった室温では完全に腐敗してしまうはずであるが、タマネギには抗カビ、抗菌物質が存在しるのだろう。
カビの発生はごく一部であった。
図5に乾燥重量比率を示した。
皮以外の残分が54.5%を占めた。


 剝いた皮のみの乾燥重量比率を図6に示した。
1枚目から5枚目までは順次低下し、6枚目以後は増加した。
 皮剥き間隔と皮の重量比率には図7のような関係が認められた。



 抽出濾液に紫外可視吸収スペクトルを図8に示した。
①190~220nmのピークは8枚目の皮が最も高く、次いで1枚目>2枚目>>6枚目>7枚目>残分>4枚目>>5枚目であった。
②250~370nmのピークは8枚目>>1枚目>2枚目>>6枚目>7枚目>3枚目>4枚目>5枚目>>残分であった。
 ポリフェノールのピークはこの波長範囲にあるので、ポリフェノールは残分に少なく、皮に多いと言えよう。
 特に最期の皮剥きで得られた8枚目の皮には多い。
③430nmより長波長の可視部の吸収は1枚目=2枚目>>3枚目>4枚目=5枚目=6枚目=7枚目=8枚目>>残分であった。
 1枚目と2枚目は490nmに強い吸収があり、鮮やかな橙色をしている。
 残分には弱いながら、皮にはない670nmのピークがあり、これはクロロフィルによるものと考えられる。


 図9に示す如く、最大吸収波長はサンプルにより若干ことなっていた。
 特に8枚目は209nmと長く、残分は197nmと短かった。
 
  

 最大吸光度を100%としたときの相対ODスペクトルを図10に示した。
 紫外部の相対吸収は8枚目の皮が最も大きく、残分が最も低く、それ以外の皮はその中間でほぼ同じであった。
 可視部の相対吸収は1枚=2枚>>3枚>4枚=5枚=6枚>7枚>8枚>残分と 皮剥きの順番どおりに並んだ。


 各ODの比率を表3に計算し図11に図示した。
 OD490nmは1枚目、2枚目の比率が両者で約50%を占め、皮剥きの順番とともに低下した。
 それ以外のODでは8枚目の比率が最も高く、次いで1枚目、2枚目であった。

 

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