240.サトウキビジュース蒸留留出液の放置 2019年7月12日

 第161節「サトウキビジュース蒸留留出液の紫外可視吸収スペクトル」で記載した留出液を室内に529日間密閉して放置し、その液の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
 写真1に放置後の留出液の画像を示した。
 放置前の留出液には沈殿物は一切存在しなかったが、放置後には沈殿物が生成しており、それは微生物フロックであった。




 図1に各留出画分の放置前後の紫外可視吸収スペクトルを比較して示した。
 放置前後のスペクトルの大きな差異は以下のとおりであった。

 ①200-210nmの吸収が大きく減少した。
  放置前はピークであったのに放置後は谷になっていた。
  吸収が負の値になるということは参照液である水よりも吸収が小さくなったということである。
 この吸収はサトウキビジュースを濃縮するとき蒸発する成分である。
 ②放置前は265nmのピークが特徴であったが、放置後は減少した。
 この吸収は濃縮中にショ糖の分解によって生じる成分であると考えられる。
 ③放置前は340nmより長波長には吸収がなかったが、放置後は長波長になるにつれて緩やかに低下する吸収が認められた。


 図2は放置後の紫外部の吸収スペクトルを示したものである。
200~200nmの谷は留出分画によって微妙に異なっている。

 

 表1に測定データの一覧を示し、これをもとに累積留出液量/ジュース比率を横軸にとって放置前後の代表的なODとpHを比較した。
 

  放置前のOD265nmは蒸留が進むにつれて上昇したが、放置後はほぼ一定になった。すなわち蒸留とともに増加したこの成分は放置中に消費された。(図3)
  放置前のOD205nmは蒸留が進みにつれ下降した。放置後も同じように下降した。(図4)
  放置前のOD420nmはゼロであったが、放置後はその蒸留画分でも上昇した。(図5)

 
 

 放置前のpHはどの画分もpH5~5.2の範囲にあった。これが放置後には大きく上昇し(図6)、そのpH上昇値は蒸留初期から中期に大きかった。(図7)

 


 放置前後のpH上昇とODの増減の関係を図8に示した。
 これによればpHの上昇と正の相関が認められたのはOD205nmの減少であった。
 OD205nmに吸収を有する物質は酸性物質で、これが微生物の成育に消費されてpHが上昇したという仮説が成り立つ。
 OD265nmはpHの上昇により逆に減少した。OD265nmに吸収を有する物質は塩基性かもしれない。

 
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