243.糖蜜の抗酸化活性 2019年8月1日

 第15節「サトウキビ由来物の抗酸化活性」ではORAC(活性酸素吸収能力)を比較した。
このたびインターネットで極めて興味深い文献を見つけた。(文献1)
今回はその中で糖蜜および糖蜜分画物のORACについての部分を紹介する。


 図1はオーストラリアにおけるサトウキビ8品種の外皮と葉を各種溶剤で抽出したときの真空乾燥物のORACを比較したものである。
これによれば外皮を抽出した場合、ORACが最も高くなったのは酢酸エチルであり、次いでエタノール、そして20%エタノールであった。
ヘキサン抽出物のORACは極めて低かった。
葉を抽出した場合のORACは品種によって酢酸エチルもしくはエタノールを溶剤にしたたおきが最も高く、次いで20%エタノールであった。
ヘキサン抽出物のORACは外皮同様極めて低かった。


 図2はサトウキビ廃棄物を酢酸エチルで抽出したときのORACの比較である。
 これによれば糖蜜抽出物のORACが最も高かった。


 糖蜜(酢酸酸性)を疎水性樹脂であるXAD-2に吸着させ、それを水、25%エタノール,50%エタノールで溶出すると
50%エタノール溶出画分(Mol-3)のORACが最も高かった。(図3)

 Mol-3画分をSepadexカラムで分画したときのORACの溶出パターンを図4に示した。
 最もORACの高いフラクションはNo.33であった。
 No.33を調製クロマトグラフィーで分画したときの溶出パターンを図5に示した。
 最もORACの高いフラクションはNo.33-3であった。
 

 図6は糖蜜をエタノール沈殿と透析膜で分画したときの分画物のORACを比較した。
 これによればORACが高い分画はエタノール可溶で分子量1万以下の低分子であることが分かった。



 図7は糖蜜を分画すればするほどORACが低下することを示したものである。
 文献1では抗酸化活性は種々の成分の相乗作用があり、成分を分離していくとその相乗作用が消失していくのではないかと
 推定している。

  
  
 
 ただし、第15節に記載したサトウキビ由来物の中には糖蜜よりはるかにORACの高いサトウキビ抽出物が記載されている。
 分画による相乗作用の消失もあると考えられるが、上手い分画方法を使えばORACの高い成分が濃縮されることも確実にあると
 考えられる。

 研究日誌の目次に戻る