257. 水槽試験糖蜜発酵廃液の再放置 2019年10月24日
第154節「糖蜜発酵廃液の水槽脱色試験(1年間) 2017年11月23日」で取得した1次軽液濃縮液を水道水で25倍に希釈し
その300mlをペットボトルに入れて写真1のように室内に再放置した。
再放置中に糖蜜色素を分解する微生物が自然に混入繁殖することを期待した。
水槽で1年間通気した液には微生物の成育に必要な窒素源と燐源は消費しつくされていると考えられたので尿素と燐酸を
種々の濃度で添加した。
なお水槽脱色試験が終了したのは2017年10月30日であり、再放置試験を開始したのは2018年5月15日である。
この間、1次軽液濃縮液は冷蔵保存していた。
写真2に放置前後のサンプルの外観を示す。
2018年5月15日から2019年10月17日まで520日間放置したが外見上、色度の低下は認められなかった。
図1にpHの経過を示す。
燐酸の添加により当然pHは低下した。
尿素を添加した場合は添加直後はpHの変化はないが放置日数とともにpHは上昇した。
図2に遠心分離上澄のOD420nm、図3にOD330nm、図4にOD210nmの変化を示した。
いずれのODも明確に低下したのは尿素0%、燐酸0.04%の条件だけであった。
図5に保存前後の遠心上澄の紫外可視吸収スペクトルを比較した。
いずれもメラノイジンや腐植物質、メラニンなどに共通するいわゆる「一般吸収」を示し、保存前後でそのパターンは変化しなかった。
尿素0%のときは保存直後から燐酸濃度の増加とともにOD420nmは直線的に減少した。
そして燐酸0.04%のときのみ放置によりOD420nmは減少した。(図6)
また尿素0%のときは保存前後とも燐酸濃度の上昇とともにpHがほぼ直線的に低下した。(図7)
pH3以下で高分子のメラノイジンが沈殿するため、上澄のODが低下したものと考えられる。
図8に示すようにpH3では放置後の方が放置前よりODが低下しているが、これは放置中にさらにメイラード反応が進みメラノイジンの高分子化が起こったためであろう。
尿素を添加した条件ではODの低下は認められないどころか、むしろ増加している。
これより、この放置条件ではメラノイジン色素は増加したか、高分子化して吸光度が上がったと言える。
改めてメラノイジン色素の安定性を認識した結果となった。
なお、この放置実験はさらに継続する。
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