259. 黒色微生物を移植したバガス 2019年11月4日
第136節でサトウキビ放置茎の表面に形成された黒色物質は腐植物質と微生物の混合物ではないかと推定した。
微生物の関与の有無を調べるために洗浄したバガスに黒色物質を移植して室内に放置し黒色物質が生成するかどうかを見ることにした。
顕微鏡購入後、黒色物質を観察したところ第138節で述べたようにカビの一種である「すす病菌」が黒色物質の正体であると考えられた。
写真1~写真4には2017年6月19日から2019年10月21日までの経過写真を示す。
放置中は水分の蒸発を1週間に一度水道水の添加で補填した。
水添加前後の容器込みの総重量の変化を図1に示す。
2018年2月18日は尿素を、4月16日には燐酸を添加した。
洗浄したバガス中には利用できる窒素源や燐源が不足していると考えたからである。
また2019年3月4日から3月10日には室温から38℃のインキュベーターに移してみた。
このとき蒸発により水分の蒸発は著しく増加したもののバガスの外見は変化しなかった。
図2は累積水添加量と累積重量減をプロットした。
重量減から水添加量を引いた値が、バガスが分解されて失われた重量と考えることができる。
2019年9月30日にバガス表面の付着物を顕微鏡観察したところ、写真5に示すように緑色をした光合成微生物であった。
最初に移植した「すす病菌」の胞子は認められなかった。
図3にバガス表面の色変化をそのRGB変化を図4に示した。
これによると春~秋には暗色化が起こり、冬には明色化が起こっている。
2ヶ月枚の正味重量減の変化を図5に示す。
移植直後の2017年7月~10月は正味重量減が多く、バガスが分解されていることを示している。
2017年11月~2018年4月の低温時には正味重量はむしろ増加している。少なくともバガスの分解は起こっていない。
しかし、2018年5月~8月に気温が上がると、正味重量は減少した。
その後2018年11月~2019年6月には正味重量変化はほとんど無かった。
2019年7月~8月に大きな重量減少がおこり、9月~10月にはそれを相殺する重量増加が起こった。
図6には2ヶ月平均の表面RGBの変化と色見本を示した。
正味重量の減少が起こるのは表面のRGBが低下する時期と一致している。
すなわち、暗色化は微生物の増殖により、明色化はその死滅によるものではないかと推定される。
2018年の暗色化時には顕微鏡観察を実施しなかった。まことに痛恨である。
2019年の暗色化時には前述のように光合成微生物であった。
光合成微生物であるならば炭酸固定により、今後は正味重量は増加するはずである。
あるいは、その光合成微生物を分解して栄養源にする微生物が繁殖すれば再び正味重量は減少するはずである。
今後は顕微鏡観察の頻度を上げ、放置試験を続けていく。
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