352.糖蜜発酵廃液の石灰処理の有無とシアノバクテリア脱色 2021年6月8日

  石灰処理をした場合としない場合の糖蜜発酵廃液(モデル廃液)の濾液にシアノバクテリアを移植しその脱色経過を観察した。
 モデル廃液は第154節図12の「1次軽液濃縮液」を水道水で25倍に希釈したものである。
 図1に石灰処理有無の工程を比較した。
 石灰処理によりpHは11.56に上昇したが、炭酸ガスを吹き込みpHを8.7まで低下させた後、24hr静置して沈殿物を濾過した。


 濾液へのシアノバクテリアの接種は図2の手順で実施し、接種した濾液は室内の窓際に放置した。


 放置液の外観変化を写真1に示した。
 シアノバクテリアのフロックはビーカー下に沈降してくるので、フロックのない液部分とフロック部分に分けてその色を写真2に示した。




 図3に液とバイオフロックのRGB変化を示した。
 No.1(石灰処理なし)の液RGBはRGBとも最初小さいが60日目あたりから上昇を開始した。
 No.2(石灰処理あり)の液RGBはRとGは最初から大きく、Bのみが小さいが、放置後すぐに上昇を始めた。
 No.1(石灰処理なし)のフロックRGBは60日目あたりからRとGが上昇を開始した。
 No.2(石灰処理あり)のフロックRGBは20日あたりまではGが優勢で緑味を浴びているが、その後Rが急増した。
 石灰処理の有無にかかわらずバイオフロックの色は緑色から糖蜜色に変化した。


 図4に電気伝導度(EC)の変化を示した。
 No.1(石灰処理なし)は90日迄0.7~0.8(mS/cm)で推移したが、その後0.9に上昇した。
 No.2(石灰処理あり)は30日で0.6(mS/cm)に低下したが、その後上昇し、最終的には0.9(mS/cm)となった。

 図5にpHの変化を示した。
 No.1(石灰処理なし)は35日にpHが8を超えたので炭酸ガスの添加を開始した。
 No.2(石灰処理あり)は最初から炭酸ガスの添加を実施した。
 図6に累積pH増の変化を示した。
 累積pH増は炭酸ガスの消費量に比例すると考えられる。


 図7に濾液の紫外可視吸収スペクトルの経過を示した。
 最初高かった200-220nmの吸収が放置により大きく減少した。


図8に代表的な相対ODの経過を比較した。
いずれのODも放置60日までに大きく減少し、それ以後の放置ではあまり変わらなかった。
ODは何れも石灰処理をした方が低かった。
図9には液白色度の経過を比較した。白色度は(R+G+B)/(255*3)で定義される。
図10は液白色度と累積pH増の相関関係を比較した。
No.1(石灰処理なし)は最初の濃い(白色度15%)液色がシアノバクテリアへ供給される光を遮断し、そのために光合成速度が遅くなっていると考えられる。
No.2(石灰処理あり)は最初から液色は薄く(白色度50%)、光の遮断が起こりにくいために光合成速度が速くなっていると考えられる。
今後石灰スラリーの添加量を変えて、どの程度まで始発白色度を高めればシアノバクテリア処理が効率に行えるかを検討したい。



 最終的に緑色を消失し糖蜜色となったバイオフロックであるが、ハイポネックスを添加すると写真3に示すようにすぐに再緑化し、増殖が始まった。



 再緑化後のバイオフロックの顕微鏡画像を写真4に示した。
 糸状細胞がからみあって大きなフロックを形成している。

 図11にハイポネックス添加前後の濾液の紫外可視吸収スペクトルを示した。
ハイポネックスの添加により200から220nmの吸収が大きく増加している。
シアノバクテリアの増殖に必要な成分の吸収である。



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