358. 磁石装着サトウキビのジュースの放置 2021年8月7日
前節で得た濾液の室内放置を2021年1月20日から2021年7月28日まで190日間継続した。
その様子を写真1,2,3,4,5に示した。
瓶に入れた液量はそれぞれ100ml、蓋は軽く置いただけで空気が入るようにした。
液に澱が認められたのは3月13日のNo.5とNo.6が最初でそれ以前は大きな外観変化はなかった。
7月になるとすべての液に澱の発生が認められた。(写真5)
明らかに気温上昇による混入微生物が増殖し澱を形成したものと考えられる。
写真6に放置開始時と終了時の外観を比較し、終了時のジュースの濾過と遠心分離の状況を示した。
すべてのサンプルで放置により澱の発生が認められた。
濾過残渣には蟻の死骸が存在した。
蟻の死骸が最も多かったのはNo.1で6月27日に蓋がはずれていた。(写真4)
次に多かったのはNo.2で7月19日に蓋がはずれていた。(写真5)
それ以外の瓶の蓋ははずれなかったものの、隙間から蟻が入ったものと考えられる。
前節ではNo.7は粘度が高く遠心分離は不可能であったが、今回は粘度は低下しており遠心分離は可能であった。
遠心上清は水で50倍希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。
図1に遠心分離上清の紫外可視吸収スペクトルを示した。
①濾紙上の残分比率は磁石数12が最も高かった。粘度は低下し濾過はできるようになったものの粘性物質が凝集して残渣となっているためと
考えられる。(図2)
②濾液のBrixは磁石数0の低下は小さかったが、磁石数の増加により大きく低下した。(図3)
③濾液のpHは磁石数0と2では放置前より低下したが、磁石数4以上では濾液放置前より上昇した。(図4)
④濾液の電気伝導度(EC)は放置により上昇し、磁石数が多いほど大きくなった。(図5)
磁石数と濾液の遠心分離上清の代表的ODを図6に比較した。
①OD420nmは磁石数2~10で低かった。
②OD330nmは磁石数8~10で低かった。
③OD270nmは磁石数4~8で低かった。
④OD200nmは磁石数が多くなるほど低くなった。
濾過残渣の顕微鏡画像を写真7に示した。
磁石数0はカビの菌糸体が主体、磁石数4,6は酵母が主体、それ以外は細菌が主体であった。
濾液遠心沈降物の顕微鏡画像を写真8に示した。
いずれも酵母が主要微生物であったが、磁石数0と磁石数12には細菌が多数生育していた。
種茎に装着した磁石の数はサトウキビジュースの成分に影響を及ぼし、混入した微生物の状態にも影響を及ぼすことが強く示唆された。
その理由について、現在説明することはできない。
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