359. オレンジ色スライム茎の浸漬放置 2021年8月19日
本節は第258節「オレンジ色スライムの生け花」の続きである。
切断面にオレンジ色スライムが生育したサトウキビの茎を生け花形式で放置し、オレンジ色スライムが黒色化した茎を水に浸漬して窓際室内に
放置した。その状態を写真1に示した。
プラスチックの蓋は密閉せず空気が入るように軽く閉めた。従って放置中に水が蒸発し水面が低下しているのが分かる。
放置開始時は縦に割った1つの茎は剣山に立て、もう一方は水中に浮かべた。
水中に浮かべた茎は底に沈み横たわる形となった。
開始時無色透明だった水は茎のまわりに繁殖した微生物により濁ったが、さらに放置時間が経過することにより清澄化した。
写真2には詳細な放置経過を示した。
写真2の中で剣山に立てた茎の上部切断面付近の画像を切り取って写真3に示した。
次第に微生物集団の膜ないしフロックが形成され2020年の夏になると最も大きくなり、その後フロックの生長は止まった。
表1には写真3をさらに切り取って茎切断面と液の境界に繁殖する画像を経時的に並べ、そのRGBとRGB%を示した。
図1には境界部分(微生物槽)のRGB変化を示した。
R,G,Bは2020年8月まで少しずつ下がり糖蜜色を呈した。その後はRGBはわずかに上昇したが2021年の夏になると
再び下降した。
図2はT値(R+G+T)の変化を示した。
夏になると暗色化することを示している。
図3にはRGB%の変化を示した。
2020年の夏にR>G>Bの差が最も大きくなり、それ以後はほぼ一定となった。
写真4に放置終了時の未洗浄茎の写真を示した。
茎表面にはノロ状の微生物フィルムが形成されていた。
この状態は303節に記載した浸漬茎の状態と良く似ていた。
写真5に放置終了時の洗浄茎、写真6に風乾した洗浄茎の画像を示した。
写真7は茎から掻き取ったスライムである。
茎を分離した液は写真8のように濾過して薄い糖蜜色の濾液を得た。
写真9はスライムの顕微鏡画像である。
オレンジ色スライムの顕微鏡画像は第219節に示し、カビの一種であった。
一方今回のスライムはカビではなくシアノバクテリアの一種であると見られた。
図4には濾液の紫外可視吸収スペクトルを示した。
オレンジ色スライムが繁殖したサトウキビの茎から溶出したものである。
浸漬した茎にはシアノバクテリアの一種が繁殖したが、茎から溶出されるミネラルが葛藤すると繁殖は止まった。
茎は可溶性成分は溶出されたものの、外皮と内部の線維質はそのまま残存していた。
サトウキビの茎は分解されにくいが、第345節バガス置き場に記載したように屋外に放置すれば確実に分解される。
今後、残存茎を土壌と混合してどのように分解されるかを観察することにする。
研究日誌の目次に戻る