368. サトウキビ水槽栽培 最終節 2021年11月17日
本節は第366節の続きであり、最終節である。
表1には2020年8月3日から2021年11月13日までの栽培経過記録を示した。
すなわち2021年11月13日に水槽栽培を停止し、サトウキビ部位の重量測定と水槽内液の分画を行った。
図1は水槽内液の変化を示した。
栽培停止の1週間前からは水の補填を行わず水槽の液面レベルは60Lから40Lに低下した。
この液面レベルはサトウキビを浸漬したときの水面であり、サトウキビの根の容積も含まれることに注意されたい。
水の補填を添加しなかったために停止時の電気伝導度は2.2(mS/cm)まで上昇した。
写真1は水槽栽培終了直前3週間の経過を示した。
枯葉は増えてきているものの、緑葉は通常の畑で栽培しているものよりも緑は濃い。
取り出したサトウキビは写真2のように解体した。
解体した各部位の重量と比率を表2に示した。
図2は新芽の重量測定結果を示した。
写真3には成熟茎の計量の様子を、図3には重量の測定結果を示した。
写真4の根の詳細を示した。
畑で栽培したときの根に比較して根は細長くて軟らかく密生している。
図4に示すように成熟茎は切断後、洗浄して搾汁した。
その後、煮沸して沈殿物を濾過して清澄ジュースを得た。
沈殿物の濾過は畑で栽培したサトウキビに比較すると極めて悪かった。
生ジュースと清澄ジュースの外観を図5に比較した。
生ジュースのBrixは13.0であった。
これは畑で栽培したサトウキビ(Brix 20超)より低かった。
清澄ジュースを煮詰めて黒砂糖を調製した。
煮詰めすぎてキャラメル状になったが、その味は苦味が強く、正常な黒砂糖とは言えなかった。
煮詰め過ぎると苦味がでるが、これほど苦くなることはない。
図6に根および茎の比率を第3サトウキビ畑の経過と比較した。
根の比率は第3サトウキビ畑の1年目7月上旬のレベルに相当し、茎の比率は1年目8月のレベルに相当した。
図7には生ジュースのBrixを同じく第3サトウキビ畑の経過と比較した。
その結果Brixは1年目8月のレベルに相当した。
これより水槽栽培したサトウキビはまだ成熟期には達しておらず、生育期が長く維持されていると言える。
水槽内液を図8のようにして軽液(溶解部分)と濾過残渣(不溶解部分)に分離した。
濾過残渣の顕微鏡画像を写真5に示した。
主たる成分は球状および糸状のシアノバクテリアであった。
軽液を写真6のようにして蒸発乾固した。
乾固物の外観と回収量を写真7に示した。
濾過残渣はホットプレートで写真8のように乾燥した。
乾燥時は磯の香りがし、乾燥末期には焼き魚の臭いがした。
濾過残渣乾燥物は写真9のようにガスコンロで灰化した。
水槽軽液の蒸発乾固物、水槽濾過残渣の灰分量を元に、添加したハイポネックスの行方を図9のようにまとめた。
すなわち添加したハイポネックスのうち13%は残存し、78%はサトウキビに吸収され、9%は水槽内液で繁殖したシアノバクテリアに
使用されたと推定された。
採取したサトウキビの新鮮重量は7,660gであるからサトウキビに使用されたハイポネックスは330g/7,660g=4.3%となる。
サトウキビの乾燥重量は測定していないが、乾燥固形分が20%であると仮定すると 7,660g*20%=1,532gとなる。
これよりハイポネックスは330g/1532g=21.5%がサトウキビ乾燥重量あたり使用されたと推定される。
残りの80%は光合成によって水と炭酸ガスから生成された有機物と考えられる。
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