451. 栄養源を添加した松腐朽残渣の室内放置 2023年12月2日

 本節は第375節の続きである。
 写真1、写真2はシャーレに蓋をし、ラップはかけずに窓際に放置したときの経過である。
 しかし気温が上がるとラップなしでは水分の蒸発が大きく、サンプルの乾燥が激しくなったため。
 ラップで覆うことにした。ラップなし、ありの状態は写真11に示した。
 ラップありの経過を写真3から写真9に示した。
 写真10はラップをはずし、水の添加もなしで放置したときの経過である。











 図1は水添加間隔日数、図2は水添加後重量、図3は水添加前重量、図4は累積水添加量の経過である。
 図3と図3に示すように2022年の10月ごろから2023年の2月ごろにかけて水分の蒸発が著しく大きくなった。
 この時期シャーレを置いた場所に太陽光のあたる時間が長くなったこと、湿度が低くなったことが影響しているのではないかと考えれる。


 表1にはサンプル表面の色変化、RGB変化、G/R変化を示した。


 図5はG/R変化をグラフ化したものである。
 G/Rが0.85を超えることがある程度長く続いた時期、すなわちシアノバクテリアが繁殖した時期は次の通りであった。
 ①No.1(栄養源添加なし) 2023年5月~7月 (初夏~夏)
 ②No.2(グルコース添加) 2022年3月、2023年3月(早春)
 ③No.3(ハイポネックス添加) 2022年6月~7月、2023年6月~8月(初夏~夏)
 ④No.4(グルコース+ハイポネックス添加) 2022年5月~8月(初夏~夏)
 すなわち、No.1,No,3,No4は初夏~夏にかけてシアノバクテリアが増殖し、No.2は初夏に増殖した。
 図6は水分の蒸発以外の正味累積重量減(負の値は重量増)の経過を示した。
 No.1とNo.3は放置期間を通じて大きな重量の増減はなかった。
 No.2(グルコース添加)は2022年9月から2023年3月にかけて正味重量が増加し、その後減少した。
 No.4(グルコース+ハイポネックス添加)は2022年7月から2023年1月にかかて増加し、その後減少した。
 正味重量の増加は光合成によるシアノバクテリアの増殖によるものと考えるのが妥当であるが.G/Rの上昇との関係は認められなかった。

 図7に放置前後の乾燥重量変化を示した。
 放置により重量を大きく減少させたのはグルコースを添加したNo.2とNo.4であった。
 No.2とNo.4は図6に示したように途中の重量増加も大きかった。
 グルコースが松腐朽残渣を分解する微生物の増殖を促進しているのであろう。
 大胆な仮説を述べると次の通りである。
 ①グルコースがリグニンを分解する微生物の増殖を促進する。
 ②リグニン分解物はシアノバクテリアの増殖を促進する。
 ③シアノバクテリアの光合成により炭酸固定で正味重量が増加する。
 ④最終的にはリグニン分解微生物、シアノバクテリアも死滅して水と炭酸ガスに分解される。
 ⑤結局リグニン分解量が乾燥物重量減に寄与する。
 

 写真12に風乾して乳鉢で磨り潰し、微量の水を添加したサンプルの顕微鏡画像を示した。
 対物*100(油浸)の画像を見ると、角ばった粒子と球状の粒子が存在する。
 角ばった粒子は松腐朽株組織由来のもので球状粒子はその組織の分解物か、死滅したシアノバクテリアだと考えられる。
 これによると角ばった粒子はNo.3(ハイポネックス)>No.1(無添加)>>No2(グルコース)>>No.4(グルコース+ハイポネックス)の
 順に多い。
 やはり、グルコースを添加したものは角ばった粒子が少ない、すなわち松腐朽株組織の分解が進んでいると言えるのではなかろうか。

 この顕微鏡画像では見えないが、動き回っているバクテリアがNo.1,No.2、No.3には確認できた。
 一方No.4はいくら探してもそのようなバクテリアは見られず、死の世界であった。
 グルコースとハイポネックスの共存によってリグニン分解微生物の活性がさらに上がったのではないだろうか。

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