364. 石灰処理をした糖蜜発酵廃液の脱色に及ぼすシアノバクテリア濃度の影響 2021年10月3日
第360節では、糖蜜発酵廃液の石灰処理とシアノバクテリア(CB)による脱色について記載した。
本節では添加するCB濃度の影響について述べる。
実験に使用したCBペーストは写真1のようにして調製した。
モデル糖蜜発酵廃液の調製法は第360節と同じである。
石灰処理の方法を図1に示した。
モデル発酵廃液に対する消石灰の量は0.05%とした。
これは360節で分かった必要最小濃度である。
写真2にCBペーストと石灰処理液の混合および放置開始の状態を示した。
写真3に放置経過を示した。
写真3の日付ごとに炭酸ガスを吹き込んでpHを低下させた。
CBを添加しない条件でも色度は経時的に低下してくる。
放置13日目にはシアノバクテリアが自然に混入し増殖してきた。
写真4に最終放置液(放置29日)の濾過の状態を示した。
CB添加なしでもCB濾過残渣が認められた。
顕微鏡で観察したところ自然に混入し増殖したシアノバクテリアは球形であり、添加した糸状のものとは異なっていた。
最初に添加したCBペーストの色は深緑色であったがが29日間の放置により緑色は減少していた。
図1にCO2吹き込み前のpHを図2にCO2吹き込み後のpHを示した。
また図3には累積pH増を示した。
累積pH増はCBペースト無添加のものが最も小さく、CBを添加したものはその添加量によって大きな差はなかった。
図4に電気伝導度を図5に電気伝導度減の経過を示した。
放置13日以前はCBペースト濃度が高いほど電気伝導度減は大きい傾向にあるが、20日以上の放置ではその差が減少する。
特にCBペースト添加なしを除けばCB濃度による差はなかった。(図6)
CB濃度と軽液OD420nm、OD300nm、OD200nmの関係をそれぞれ図7,図8,図9に示した。
CBペースト添加なしでは放置後のODは高いが、CBペースト5%以上では大きな差はなかった。
以上よりCBの高濃度添加には有効性はないと結論する。
図10に放置最終日(29日)のOD200nmとEC減の相関を示した。
OD200nmの中には無機アニオンに由来するものが多く、CBはそれらを栄養源として使用していると考えられる。
今まではCBに色素のみならず電気伝導度も減少させることを目指していた。
しかし、今後は電気伝導度は無視して色素を迅速に除去する方法を検討したい。
例えば石灰処理した糖蜜発酵廃液にハイポネックスを添加すればCBの増殖はより旺盛になり、脱色はより速くなると期待する。
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