370.黒豆黒糖麹発酵における加熱サトウキビジュース沈殿物添加の影響 2021年11月20日
第363節において生サトウキビジュースを加熱したときに析出する沈殿物(いわゆる灰汁)を含有した黒砂糖を発酵原料に用いた方が
沈殿物を含有した黒砂糖を用いた場合より、発酵生産物の熱水抽出液のメイラード反応抑制作用が強いことを示した。
そこで、本節ではこのことを確認するために黒砂糖と加熱沈殿物の比率を変えて黒豆黒糖麹発酵を実施した。
使用したサトウキビジュース加熱沈殿物は2018年12月~2019年1月に黒砂糖を製造したときに採取し凍結保存していたものである。
これを写真1に示すように食器乾燥機で乾燥したものを用いた。図1に乾燥時の重量変化を示した。
黒砂糖は2019年1月に製造した鍋残を用いた。(写真2)
写真3に発酵培地の調製過程を示した。
オートクレーブで殺菌した培地は室温まで冷却し、種麹(豆麹)を添加し、良く混合し、30℃でインキュベートした。(写真4)
写真5にインキュベーション経過を示した。
1日に一度写真撮影を行い、その後十分に撹拌した。
側面の画像は変化が見られないが、上表面の画像は2日目から菌糸が発生した。
撹拌することにより菌糸は見えなくなるが、1日経つとまた菌糸が現れた。
図2にインキュベーション中の始発重量に対する重量減少率を、図3に沈殿物比率と重量減少率の関係を示した。
黒砂糖80%:沈殿物20%あたりがやや重量減少率が大きいようであった。
発酵物は写真6のように熱水抽出を行った。
写真7は熱水抽出濾液の濃縮の状況を示した。
写真8は熱水抽出残渣の蒸発乾固過程を示した。
乾燥した残渣はビニール袋に入れて2ヶ月間室温で保存した。
No.4とNo.5のサンプルはカビに覆われていた。
写真9に熱水抽出濾液とその濃縮液の外観を示した。
今回は熱水抽出液をメイラード反応に使用し、濃縮液は凍結保存した。
メイラード反応試験に使用する熱水抽出濾液は写真10のような処理を行った。
表1にメイラード反応配合表を示した。
メイラード反応は従来どおりサンプルを水浴に入れ、水浴を密閉してインキュベーターに入れ温度を40℃にコントロールした。
(写真11)
40℃のメイラード反応は30日間実施した。そのときの反応液の色調経過を写真12に示した。
反応経過を定量的に評価するために黒色度増を以下のように計算した。
①写真2よりRGBを測定する。
②T=RGBを計算する。
③白色度=T/(255*3)(%)%
④黒色度=100-T (%)
⑤黒色度増=(各インキュベーション日数における黒色度)-(反応開始時の黒色度)
黒色度増の経過を図4に示した。(図4のタイトルはメイラード反応黒色度経過としてあるが正しくは黒色度増経過である)
図5,図6,図7,図8に沈殿物比率とメイラード反応抑制作用についての解析を行った。
これによれば沈殿物比率が高いほどメイラード反応抑制作用は大きいと言える。
図9は反応液の紫外可視吸収スペクトルを示した。
図10,1112,13に相対OD増を用いた沈殿物比率とメイラード反応抑制作用の解析を行った。
No.1(沈殿比率0%)で明らかに異常な結果が得られたため、図12,13ではこのデータを除外した。
結果として沈殿物比率が高くなるにつれ、一定のメイラード反応抑制作用を得る熱水抽出液の所要量が少なくなることが示された。
次回は凍結保存してある熱水抽出液濃縮液を用いて、沈殿物比率0%(黒砂糖100%)と沈殿物比率100%(黒砂糖比率0%)についてより細かく
添加濃度を変えたメイラード反応試験を実施する予定である。
今までの結果から推定すると黒豆黒砂糖麹発酵より黒豆沈殿物麹発酵の方がよりメイラード反応抑制作用のある熱水抽出液が得られると
考えられる。
2021年生育サトウキビからの黒砂糖製造時には生ジュース加熱沈殿物をすべて凍結保存することとしたい。
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