386. 乾燥イシクラゲを添加した糖蜜発酵廃液の放置 2022年3月18日

  イシクラゲで糖蜜発酵廃液の脱色ができないものかと考えた。
 イシクラゲは乾燥してもまた水を与えれば復活するそうだ。
 さらに食べることもできる安全なシアノバクテリアである。

 イシクラゲは写真1のように室内で自然乾燥させ、それを破砕した。
 


 モデル発酵廃液への消石灰の添加量は通常より少なくし、脱色度の低い石灰濾液を得た。
 イシクラゲの力におおいに期待したからである。
 その濾液に乾燥イシクラゲを種々の濃度に添加して窓際の室内に放置した。
 その様子を図1に示した。
 放置中に蒸発する水分は水道水で補填した。



 写真3に放置開始時と終了時の外観を示した。
これはイシクラゲの脱色能力によるものであろうか?
結論を言ってしまえば、そうではない。
 乾燥イシクラゲを添加していない実験No.1にもバイオフロックが存在し、最終的にはほぼ無色透明になった。
すなわち、脱色に寄与したのは添加したイシクラゲではなく、自然に混入したシアノバクテリアであった。



 写真3には放置経過の詳細を示した。













 図1にpH変化を示した。
 図2には乾燥イシクラゲ添加濃度と放置中の最大pH、平均pH、最小pHの関係を示した。
 最大pHと平均pHは乾燥イシクラゲ添加濃度0.4%までは上昇し、0.4%以上でほぼ一定となった。
 最小pHは乾燥イシクラゲ添加濃度が大きくなるほど低下した。
 




 図3にECの変化を図4にECの減少経過を示した。
 



図5に悪臭強度の変化を示した。
悪臭の発生は添加した乾燥イシクラゲの腐敗に伴い発生するものであり、乾燥イシクラゲ添加濃度が高いほど悪臭強度もその持続期間も長かった。
図6に遠心上清のOD420nmの経過を示した。
乾燥イシクラゲ濃度が高くなると初期のOD420nmは一旦上昇し、その後低下していった。



 最終放置液はペーパータオルで濾過して、濾液と濾過残渣を得た。
 写真4は濾液、濾液をホットプレート上で蒸発させた乾固物および乾固物を水に再溶解したときの状態である。
 再溶解したものを一夜放置すると底に白色沈殿物が堆積した。


 写真5は最終放置液の濾過残渣とその乾燥物である。


 写真6に濾過残渣の顕微鏡画像を示した。
 いずれもイシクラゲとは別種のシアノバクテリアであった。



 表1に最終放置液濾過時のマスバランスを示した。
   
 図7は乾燥イシクラゲ添加濃度と濾液重量の関係である。
 乾燥イシクラゲ添加濃度が高くなるほど濾液重量は減少した。

    

 図8は乾燥イシクラゲ添加濃度と回収濾過残渣重量の関係である。
 乾燥イシクラゲ添加濃度が高くなるほど回収濾過残渣は増加した。
   

 図9は乾燥イシクラゲ添加濃度と乾燥物重量の関係である。
 濾過残渣の乾燥物が濾液の乾燥物に比較して圧倒的に多い。
 乾燥イシクラゲ添加濃度0.6%までは添加した乾燥イシクラゲより生成した乾燥物が多く、0.6%以上では生成した乾燥物の
 方が少なかった。

   

 図10に最終濾液の紫外可視吸収スペクトルを示した。

  

 図11は乾燥イシクラゲ添加濃度と相対OD(乾燥イシクラゲ無添加のときのODを100%としたとき)の関係である。
 相対ODは乾燥イシクラゲ添加により高くなるが、0.6%に極小点があった。



 以上より乾燥イシクラゲを添加した糖蜜発酵廃液を放置したところ、イシクラゲが増殖することはなかった。
イシクラゲは腐敗して分解し、別のシアノバクテリアが増殖するための栄養源となった。


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