407. 黒大豆きな粉とサトウキビジュース沈澱混合物の麹発酵 2022年10月16日

 これまでに①黒大豆きな粉と②自家製黒砂糖および③サトウキビジュースを加熱したときに発生する沈殿物を混合して麹発酵を検討してきた。
370節では①を一定にして②と③の比率を変化させて得られた発酵物の熱水抽出液のメイラード反応抑制作用を比較した。
その結果、メイラード反応抑制作用は②より③の比率を増加させた方が大きくなることが分かった。
本節では①黒大豆きな粉と③サトウキビジュース沈殿物のみを原料にしてやや大きなスケールでの実験を行った。
その目的は以下のとおりである。
(1)ある程度の量の抽出液を取得し、自分自身で試飲してみる。
(2)熱水抽出残渣を再度麹発酵させ、1次、2次、3次抽出液を得て、そのメイラード反応抑制作用を比較する。

 サトウキビジュース沈殿物は写真1に示すように、凍結保存していたものを解凍して用いた。




 発酵培地の調製は写真2に示した。


 培地はステンレス製の鍋に入れ、従来使用したのと同じ種麹を移植し、蓋をして実験室内に放置した。
 1日に一度蓋をとり混合し、写真撮影、重量測定、培地温度測定を行った。
 1次発酵の経過を写真3に示した。


 1次抽出は1次発酵物に同量の水道水を加え、沸騰開始後20分間の熱水抽出を行った。
 その経過を写真4に示した。


 1次発酵物は同じ鍋に戻して、写真5のように2次発酵を行った。
 その経過を写真5に示した。



 2次発酵物はそれとほぼ同量の水道水を加え、沸騰開始後20分間の熱水抽出を行った。
その経過を写真6に示した。

 2次抽出残渣は写真7に示すように3次発酵を行った。

 3次発酵物にそれとほぼ同量の水道水を添加して沸騰を開始したが、沸騰すると粘度が急激に上昇してきたため沸騰後10分で
熱水抽出を停止した。またそのままでは沪過は困難であったため、液に500mlの水道水を追加し粘度を下げて沪過を行った。
それでも1次、2次抽出に比し沪過速度は遅かった。
その経過を写真8に示した。

 発酵物の重量変化を図1に温度変化を図2に示した。



 3次抽出残渣は主としてホットプレートで最後は食器乾燥機で乾燥を行った。
 その経過を写真9に示した。

 3次抽出残渣の乾燥時の重量変化を図3に相対重量変化を図4に示した。
        
 各抽出沪液は沪過終了直後の-20℃で冷凍保存した。
その後解凍し、再沪過を行った。(写真10,写真11)
再沪過では沪過残渣はまったく認められず、冷凍保存中に大粒子の沈殿析出はなかったと言える。


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  写真12に抽出沪液(解凍再沪液)の色調を比較した。
  図5にはRGBを図6には乾燥固形分を比較した。
        

         

         

 写真13は各発酵物の顕微鏡画像である。

 図7には全工程のマスバランスを示した。
       
 図8には固形分の相対重量を示した。

 発酵物の固形分は発酵回数の増加により低下した。(図9)
 抽出液の固形分は発酵回数の増加により低下した。(図10)
 発酵物に対する抽出液の固形分比率、すなわち固形分抽出率は発酵回数の増加により低下した。(図11)


 今後は凍結保存してある抽出沪液について以下の測定を行う。
 ①紫外可視吸収スペクトル
 ②総ポリフェノール濃度
 ③グルコース-MSG系でのメイラード反応抑制作用

これらのデータを検討した上で、1ヶ月程度の試飲継続を実施する予定である。

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