367. 雑草とともに生育するサトウキビ その3 2021年10月29日
本節は第300節の続きで、本テーマの最終節である。
写真1から写真5は2020年6月15日~2021年10月23日におけるほぼ1週間間隔で撮影した第1サトウキビ畑の記録である。
2020年の夏にはサトウキビの新芽とともにツル植物が旺盛に生育し、サトウキビを覆った。
秋になるとツル植物は枯れ、サトウキビが元気に残っている。
しかし2020年12月~2021年2月の冬は気温が例年より低く、サトウキビも枯れてしまった。
2021年春になるとまずカラスのエンドウとクサイチゴがサトウキビの新芽より先に生育してくる。
クサイチゴの実は第3サトウキビ畑でたくさん収穫できたが、第1サトウキビ畑でも少し収穫できた。
夏になるとツル植物で覆われ、秋になるとサトウキビの新芽がはっきり見えるようになった。
写真6は2021年6月22日~10月23日までの第1サトウキビ畑全体の経過である。
中央部下にバガス置き場があり、夏が進むと雑草に完全に覆われてしまう。
右端にあるのはススキの株で2019年と比較すると大きく生長した。
この期間サトウキビの新株が何とか見えるのは8月中旬以降で、それまでは完全にツル植物に覆われている。
写真7には2019年1月に除草を止めてから1ヶ月おきに撮影した第1サトウキビ畑の状態である。
2019年12月~2020年2月は暖かかったので冬になってもサトウキビの緑の葉が残っている。
2020年12月~2021年2月は寒かったので冬のサトウキビは完全に枯葉色である。
除草を止めた2019年の春に最初に生えてくるのはカラスノエンドウであった。
カラスノエンドウにはアブラムシが付き、それを餌とするテントウムシをたくさん見つけることができた。
夏になって旺盛に生育したのはイズハハコクサ属の雑草であった。この植物名は特定できないがオオアレチノギクの一種だと思う。
後にこの植物はイズハハコグサ属ではなくコセンダングサと判明した。
2019年のツル植物の旺盛な生育は認められなかったが2020年、2021年の夏は極めて優勢であった。
第1サトウキビ畑での実験を終えるにあたり、全体を見やすくするためにその前にある樹木を伐採した。
その様子を写真8に示した。
さらにスモモの木の枝が邪魔になるのでこれも切り落とした。その様子を写真9に示した。
写真10はサトウキビを残して雑草を除去した前後の状態を示した。
除去した雑草は写真11のように回収して分類した。
オオアレチノギクは誤りでコセンダングサである。
さらに残ったサトウキビを刈り取る前後の様子を写真12に示した。
写真13は刈り取ったサトウキビの新株と旧株である。
表1に回収した雑草の種類別の重量を図1に重量比を示した。
驚くべきことに雑草の種類はさほど多くなかった。
第140節で第2サトウキビ畑に生えた雑草は20種類もあったのにである。
第1サトウキビでは競争に勝った雑草だけが残ったと言えよう。
ツル植物が全体の約50%を占め、続いてオオアレチノギク(オオアレチノギクではなくコセンダングサと後日判明)が31%,クサイチゴが13%であった。
ツル植物はサトウキビに巻き付いて生育するので、サトウキビを上手く利用して優勢になったと言えよう。
オオアレチノギクは第3サトウキビ畑にも生え、抜いても抜いても生えてくる。
ほんとうに強い植物である。
放置すればその背の高さはサトウキビにも負けないほどになる。
クサイチゴはなぜかサトウキビと相性が良いのであろう。
表2、図2に示すようにサトウキビの旧株はバイオマス全体の約37%を占め最大であった。
しかし、2021年度に出芽した新株はわずか7.5%でクサイチゴと同程度である。
サトウキビの新株が優勢になるかどうかは、冬の気温であると考えられる。
気温が高ければ春の出芽数は多くなるし,気温が低ければ少なくなる。
結論としてサトウキビは雑草に淘汰されることなく生き延びる強い植物だと言える。
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