458. 生ジュース加熱前に黒豆きな粉を添加した時の沈殿物の取得 2024年2月8日
前節で取得した生ジュースを加熱して生成する灰汁の沈澱物を分離し、清澄ジュースを煮詰めて黒砂糖をつくるのが例年の方法である。
しかし、本年度は生ジュースを加熱する直前に黒豆きな粉を添加する方法を実施した。
灰汁の沈澱物は後に黒豆きな粉と混合して麹発酵を行いその熱水抽出エキスを調製しBBKと呼称している。
沈殿物と黒豆きな粉を後で混合するのなら、加熱前に添加することにより、沈澱の凝集性が改良されるのではないかと考えたのである。
写真1に示すように収穫No.ごとに黒豆きな粉の生ジュースに対する添加濃度を0%~1.60%の間で変化させている。
収穫No.1で最大添加濃度の1.60%を実施したが、この添加量は麹発酵前に混合する量に相当する。
すなわち、収穫No1の処理方法で問題がなければ、得られた沈殿物をそのまま麹発酵に進めれば良いことになる。
写真2加熱後の自然沈降とサイホン重液の沪過の様子である。
写真3は沈降過程の詳細である。
表1は沈澱取得時の液重量バランスの一覧である。
表1のデータを使用し、生ジュースに対する黒豆きな粉添加濃度と各種データとの関係を図1~図8に示した。
図1 重液相対沈降高さは0.3%~0.5%付近で最小になる。
図2 サイホン軽液の相対重量は0.5%で最大になる。
図3 サイホン重液の相対重量は0.5%で最小になる。
図4 サイホン重液に対する沪液の比率は添加濃度が大きくなると低下する。
図5. 重液沪液の相対重量は添加濃度が大きくなると低下する。
図6. 沪過残渣の相対重量は添加濃度が大きくなると上昇する。
図7. 回収沪過残渣の相対重量は添加濃度が大きくなると上昇する。
図8. 清澄ジュースの相対重量は添加濃度が大きくなると低下する。
沈澱の凝集性という点から見ると添加濃度0.5%あたりが良さそうである。
表2に生ジュース、回収沈澱、清澄ジュースのデータを示す。
清澄ジュースのBrixがバッチにより大きく違うが、これは図9に示すように加熱時による濃縮率による差である。
そのバッチも20分沸騰させているので生ジュース量が少ない場合濃縮率が高くなる。
図10.生ジュースのpHはバッチにより大きな差はないが、清澄ジュースのpHはきな粉添加濃度が低いと低くなる。
図11.きな粉添加濃度が高くなるほど回収沈澱のRGBは低下する。
図12.きな粉添加濃度が高くなるほど清澄ジュースのRGBは低下する。
沈澱の凝集性の良否は回収沈澱の水分測定により確認する。
また各回収沈澱はきな粉添加比率を一定にして麹発酵させ、その熱水抽出エキスの総ポリフェノール濃度を測定する。
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