460. バガスの水浸漬インキュベーション 2024年2月16日
サトウキビ茎を水浸漬してその経過を観察する実験を長期間に渡り実施、現在も続行中であるが、使用した
サトウキビ茎はスエヒロタケが繁殖した後の茎であり、栄養源はスエヒロタケに消費されていた。
今回はまだサトウキビジュースが多量に残存する搾汁茎残渣を水浸漬し、30℃でインキュベーションしてどのような
微生物が増殖してくるかを観察してみた。
搾汁茎残渣は2023年生育サトウキビの収穫No.7のものである。
なお搾汁茎残渣は以後バガスと呼称する。
写真1に実験手順を示した。
バガスは100mlの温水(60℃~70℃)で洗浄し、洗浄回数を変えたものを使用した。
表1に浸漬開始時の条件を示した。
洗浄により付着している生ジュースは減少していくが、浸漬水の生ジュース含有率は電気伝導度比率から
推した。
図1に洗浄回数とと浸漬水の電気伝導度の関係を示した。
図2には洗浄回数と生ジュース含有率推定値の関係を示した。
写真2には30℃インキュベーション時の外観の経過を示した。
インキュベーションによ蒸発ロスは水道水の添加で補填した。
①最初透明であった浸漬水は1日のインキュベーションで白濁した。
②当初浮遊していたバガスはインキュベーションが進むにつれ沈降するようになり、その沈降は洗浄回数が少ないほど早く起こる。(表2)
図3にインキュベーションによるpH変化を示した。
インキュベーションとともにすぐにpHの低下が起こり、いずれの洗浄回数でも2日目でpH4を切った。
微生物の作用により糖が有機酸に変わっていると考えられる。
pHの低下は洗浄回数が多いほど大きかった。
図4にインキュベーション開始時と終了時の電気伝導度を比較した。
インキュベーションにより電気伝導度は上昇し、pHの低下と同じく洗浄回数が多いほど上昇度は
大きかった。
インキュベーション終了時の浸漬水を写真3に示すように遠心分離し、沈降物を顕微鏡で観察した。
その結果を写真4に示した。
いずれも酵母と細菌が存在したが、洗浄回数0回と1回は酵母の比率が高く、洗浄2回と3回は細菌の比率が高かった。
洗浄回数が少ない場合、酵母がアルコールを生成するのに対し、洗浄回数が多い場合細菌が直接有機酸を生成することがpHと電気伝導度の差に現れたと推察する。
30℃インキュベーションを終えた浸漬液は写真5のように室内窓際への放置を開始した。
最終的にはシアノバクテリアが増殖することを期待し観察を続ける。
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