480.小袋包装黒砂糖のカビ発生 2024年8月30日
黒砂糖を室内に放置するとカビが生え、時間が過ぎると飴状になってしまう。
その経過については以下に記載した。
1608K100.黒砂糖のカビ
1809K194.黒砂糖のカビ2
2009K313.黒砂糖のカビ3
2210K408.黒砂糖のカビ4
黒砂糖のカビを防止するために第一に注意するべきは包装するときに晴れて湿度の低い日を選ぶことだ。
湿度が高いと黒砂糖に水分が吸着し、カビの増殖を促進する。
成形した黒砂糖はさらに水分を除去するために乾燥し、シリカゲルを入れて保管するのが良い。
これらのカビ防止方法は1707K141.黒砂糖のカビ防止 に記載した。
この方法で室内に保管すると今までカビが発生することはなかった。
ところが本年の8月27日に保管庫から小袋包装した黒砂糖を取り出してみるとその44%にカビが発生していた。(表1、図2)44%)
自家製黒砂糖は地域の高齢者クラブやお祭りで配らせてもらっており、とても喜んでいただいている。
今年はこれだけの黒砂糖にカビが生えてしまったら、もう配ることはできないであろう。
手間をかけて製造しただけに、まことに残念であり、何としても原因の究明をしたいと考えた。
図1に室温保管黒砂糖のカビ発生調査状況を示した。
小袋包装をしたのは5月5日であり、カビ発生を確認したのは8月27日である。
図中、袋数が減少しているものはすでに配布したものである。
小袋包装の一部は密閉瓶に入れて保管している。
瓶保管の余りは小袋のまま保管した。
また、鍋残と小袋包装不適品は粒または粉状のもので、これはジプロックにいれて保管した。
まず確実に言えることは密閉瓶に保管した黒砂糖にはまったくカビの発生は見られないことである。
密閉瓶保管は数年間継続しているが、カビの発生は一切起こっていない。
プラスチック小袋での包装は空気中の水分や空気を完全に遮断できていない。
いっしょに封入しているシリカゲルは青から白色に変わり、一部はピンク色に変色していた。
しかしである、従来はシリカゲルの青色が消失してもカビは発生しなかったのである。
表1は小袋黒砂糖のカビ発生率の一覧を示した。
カビの発生率は44%であった。
瓶保管余りサンプルと小袋サンプルのカビ発生の有無が一致したのは11件、不一致は8件と大差なかった。
図3に最終煮詰め日とカビ発生率の関係を示した。
1月上旬から中旬に製造したときにカビの発生率が低かった。
図4に瓶保管余りサンプルとのカビ発生有無の一致率の経過を示した。一致率は1月上旬製造品で極大となった。
しかし、その理由の説明はできない。
図5に黒砂糖保管時の延岡市の気象データを年度別に比較した。
これによれば2024年の気温、特に最高気温が例年に比較し著しく高いことが分かった。
小袋の保管を開始した5月の最高気温は例年は24℃であるのに対し本年は31℃になっている。
今年の高い気温においては外気から混入した水分や酸素が例年と変わらなくてもカビの増殖が促進されたと考えられる。
それでは今回、カビが発生したバッチと発生しなかったバッチにどのような差があるのであろうか?
最も考えられるのは乾燥黒砂糖の水分である。
乾燥時間は一定であるので、最終煮詰め物の水分が高いほど乾燥黒砂糖の水分も高くなり、カビが生えやすくなるであろう。
最終煮詰め物の水分も乾燥黒砂糖の水分も測定していないので、その代替として次の2項目を比較することにした。
①最終煮め液をパットに注入後、約1時間放置しナイフで切り込みをいれるが、そのとき切り口から出る残渣の状態を見る。
残渣に粘着性がある場合水分が多いと考えられる。
②最終煮詰め液をパットに注入した後、鍋に付着して残る鍋残の重量を比較する。
鍋残が少ないほど、最終煮煮詰め液は流動しやすく水分が多いと考えられる。
図6にこれらの関係を調査するためのデータを示した。
図7に示すように切り口残渣粘着度とカビ発生率には正の相関があると言える。
また図8に示すように鍋残黒砂糖比率とカビ発生率には負の相関があると言える。
これよりカビの生えやすいバッチは最終煮詰め物の水分が高いと考えられる。
前述したように1月上旬から中旬に製造したときのカビ発生率が低かったのでこの時期、特に気温や湿度が低かったたのではないかと
考えたが、図9と図10に示すようにそのようなことはなかった。
この時期、釜残黒砂糖が多目であることから、たまたま最終煮詰め液の水分が低くなったのであろう。
今後の対策として以下の項目を検討する。
①保管を室温ではなく冷蔵保存とし、原則として夏場は配布しない。
②密封性の高い包装材料を選択する。
③カビが生えない黒砂糖の水分を研究し、そこまで確実に乾燥することにする。
ただし、現状のように食器乾燥機での乾燥では困難で専用の熱風乾燥機をを購入する必要があり、
投資額が大きくなる。
また乾燥しすぎて固くなると風味が損なわれる。
いずれにせよ来年度の黒砂糖製造に向けて最適な方法を確率する。
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