365.黒色物質を移植したバガス2 2021年10月15日
本節は第259節の続きである。バガスに移植した黒色物質は第138節に記載したようにすす病菌の子囊胞子であった。
第259節で述べたようにすす病菌を移植したバガスではシアノバクテリアが増殖してきた。
本節の観察でも写真1示すように放置したサンプルは常に緑色を呈し、シアノバクテリアが増殖を続けているものと考えられた。
写真2は黒色物質を移植した2017年6月23日から放置を終了した2020年11月19日までの1ヶ月毎のサンプル表面の状態変化を示した。
年月を経るにつれて緑色が強くなっているのがはっきりとわかる。
放置中に蒸発水分は水道水を添加して補った。図1は水添加前後の重量(シャーレを含む)の変化を示した。
図2は累積水添加量と累積重量減の経過を示した。
放置開始時のサンプル重量は第136節に示すように乾燥バガス粉末3.0g、黒色物質濾液3.5g、水13.9gで合計20.4gであった。
放置期間中に添加した水道水の量は217gであったから実にサンプルの10倍あまりの水を添加したことになる。
サンプルの正味重量減は累積重量減から累積水添加量を差し引いた値である。
累積の正味重量減の変化を図3に示した。
正味重量減のピークは2019年の春でそれ移行は低下に転じている。
すなわち2019年春まではバガス成分が消費されていたのが、それ以後はシアノバクテリアによる炭酸同化作用で重量の増加が起こったと考えられる。
これは写真2でサンプルが緑化を開始する時期と一致している。
放置終了物は図4のようにして①上層液 ②微生物層 ③バガス層に分画した。
上層液はさらに遠心分離をして沈降物と上清に分けた。
水を添加した混合液のpHが2.83と低かったのには驚いたが、2018年4月16日に添加した燐酸の量が尿素に比し多すぎたためだと考えられる。
写真3には各分画から顕微鏡観察のためのサンプリングの様子を示した。
写真4に各部分の顕微鏡画像を示した。
上層液遠心沈降物は球状のシアノバクテリアが主体であった。
微生物層は球状と糸状のシアノバクテリアが混在していた。
バガス層を見て驚いたのはシアノバクテリアとともにすす状菌の子囊胞子がはっきりと確認されたことである。
写真5はバガス層の顕微鏡画像で子囊胞子以外にすす状菌の菌糸体かもしれない物も観察された。
シアノバクテリが優先的に繁殖をはじめた時点でもはやすす状菌に必要な有機栄養源は葛藤したと考えていたのだが、どうやらシアノバクテリアが生成した有機物を栄養源にして
すす状菌も生存していたようだ。
図5は上層液遠心上清の紫外可視吸収スペクトルである。
200nm以外にピークはなく燐酸等の無機イオンに由来するものと考えられる。
微生物層とバガス層は回収し、十分な無機栄養源のあるハイポネックス水溶液に懸濁して窓際に放置することにした。
シアノバクテリアはもちろん旺盛に増殖すると思うが、果たしてすす病菌はどうなるだろうか。
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